左から「住まいの松栄」酒井氏、東急担当者木所、「無印良品東京有明」新井氏

街とつながり、暮らしを整える。
新たなライフスタイルに寄り添う
賃貸マンション。

賃貸住宅のあり方を住まい手目線で模索する取り組みを始めました。ここでは東急株式会社が、無印良品東京有明といっしょになって新たな暮らしと住まいを共創しています。この取り組みがどうして生まれたのか、そして、どんなことに挑戦しているのか。今回は、私たちが考えるこれからの暮らしをご紹介したいと思います。

時代の変化に応じた
より良い賃貸住宅とはどんなもの?

私たち東急が2009年から展開している賃貸住宅「スタイリオ」シリーズ。“賃貸住宅はもっと自由に、もっと楽しく”というコンセプトの背景には、「住まいをもっと楽しく気軽に選べたらいいな」「一度はこんな街に住んでみたいな」「こんな暮らしをしてみたいな」といった住み手の願いをかなえたいという思いがあります。自分の価値観やライフスタイルを大切にする住み手が、自分らしく輝けるような環境づくりを目指し、英語の「スタイル」とイタリア語の「イオ(私)」を組み合わせ、「スタイリオ」と名付けました。

だからこそ、これまで提案してきた住まいには、個性的でユニークな特徴を持つものが多数あります。特徴的なものでは、車好きのための愛車を眺めて暮らせる住まい、音楽好きのための防音室と音楽ホールがある住まい、アーティストのためのアトリエがある住まいなど。親子で暮らせるシェアハウスやキッチンスタジオのあるシェアハウスなども展開し、賃貸住宅の既成概念を超えて新たな挑戦を続けてきました。


食をテーマにしたシェアハウス「スタイリオウィズ上池台」共用キッチン

そうして10年以上が経ちましたが、2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに世の中の状況は大きく変わりました。まさに今のこの時代において「スタイリオ」が何をすべきなのか、改めて考えるべき局面を迎えたのです。時代の変化に応じた新しい取り組みを取り入れながら、特別なことをするのではなく今の賃貸住宅に求められる新たなスタンダードを作っていきたい。より良い賃貸住宅の在り方を追求したい。そういった思いが芽生え、「新しい暮らしに寄り添う理想の賃貸住宅」の模索が始まったのです。

私たちがその新たな模索をスタートする舞台に選んだのが、東急東横線の妙蓮寺駅(神奈川県横浜市)から徒歩4分の立地にあるシングル向け賃貸マンション「スタイリオ妙蓮寺Ⅲ」です。ちょうどこちらの開発中に、新型コロナウイルス感染症の流行が始まったこともありますが、何よりも妙蓮寺の街にはここにしかない独自の魅力を備えているからです。


妙蓮寺の街

妙蓮寺駅を出ると駅名にもなっている由緒ある寺院「長光山 妙蓮寺」があり、その豊かな緑が閑静な街並みをかたちづくっています。駅前に続く商店街には、八百屋さんやパン屋さんを始め、おでんの種のみを専門に売るおでん屋さん、自家製ウインナーが自慢のお肉屋さんなど、小さいけれど個性豊かなお店が並びます。日々の生活に必要なスーパーや食材店、薬局などはそろう一方で、ファストフード店を始めとするチェーン店が少なく、昔ながらの人のつながりが感じられる“ヒューマンスケールの街”です。だからこそ暮らしやすく、はじめての一人暮らしでも安心して住める街と言えます。


東急東横線 妙蓮寺駅

新型コロナウイルス感染症の流行でこれまで以上に一人暮らしに対する不安や悩みが生じる今、「自分らしい暮らし」を営むにはマンションや部屋そのものの在り方ももちろん大切ですが、街の雰囲気や街とのつながり方も重要な要素になります。私たちは、街とゆるくつながる賃貸マンションを目指し、「妙蓮寺ならでは」という視点をもちながらこのプロジェクトに取り組みました。


スタイリオ妙蓮寺Ⅲ 501号室からの風景

コンパクトなワンルームで
オン・オフを切り替え、快適に在宅勤務する

「スタイリオ妙蓮寺Ⅲ」が最初に入居者を募集するとき、「まずは転居のきっかけとなり、少しでも一人暮らしのサポートになるサービスを」と考え、二つの入居特典をつけました。一つは、悩みの種になりがちな収納に関するもの。普段は使用しない荷物を箱に詰めて送れば保管してくれる「クラウド型収納サービス」のギフトカードを贈呈しました。そしてもう一つは、コワーキングスペースの利用チケットの贈呈です。このコワーキングスペースは妙蓮寺の商店街にある石堂書店の二階を利用したもので、「本屋の二階」と名付けられています。自宅の近くにサードプレイスにもなるコワーキングスペースがあれば、暮らしがより快適になるのではと考えたのです。同時に、街の人々と積極的に関わるきっかけになってほしいという思いもありました。

コワーキングスペース「本屋の二階」

しかし、上記のように特典というかたちで住まいの外にサービスを用意する一方、私たちがやらなければならないのは、部屋そのものの在り方を改めて見直すことです。そこで最も必要性を感じたのが「コンパクトなワンルームでも快適に在宅勤務できるプラン」でした。早速、ワンルームでの在宅勤務をテーマにモデルルームの計画を開始したのですが、これが思った以上に難しく、限られた面積での快適なレイアウトやオンライン会議の背景など、課題が山積みだったのです。

この課題に一緒に向き合ってくれる最適なパートナーはいないだろうか。そう考えて、協力を依頼したのは無印良品さんでした。無印良品の製品は幅広い世代に好まれ、一人暮らしの賃貸マンションを利用する私たちのターゲット層にもフィットするはずです。シンプルで偏りのないデザインは性別も問わず、誰もが受け入れやすい。また、高額すぎず現実的に手に入りやすい価格帯の家具をそろえている点でも最適でした。何よりも、ブランドとして「感じ良い暮らし」を追求し続けている。限られた空間でワークスペースを確保するという私たちと同じ課題に向き合い、『無印良品でつくるワークスペース』という書籍も出されていたのが依頼のきっかけです。

そうして声をかけた結果、私たちの取り組みに賛同し、一緒にこのプロジェクトをつくり上げてくれたのが「無印良品 東京有明」の新井亨さんでした。在宅ワークの課題を中心に、新井さんとともに改めてワンルームの賃貸住宅の在り方を見直しました。そこで出てきたのが、「暮らしを整える」というキーワードです。

一人暮らしを始めるとき、借りる部屋に何も用意されていなければ、家具や生活道具をそろえるための多額のお金がかかります。一方で備え付けの家具がありすぎると、自分の好きなインテリアをかなえられず不自由を感じます。また、自分一人だけの暮らしとなると、誰に合わせる必要もなく自由な分、生活習慣は乱れがちです。物理的に部屋を整えるのも、生活習慣を整えるのも、一人暮らしは思った以上に大変なのです。そんななかで「暮らしを整える」ためには、マンションや部屋というハード面と、システムや街との関わりというソフト面の両方が大切になるのではないでしょうか。


スタイリオ妙蓮寺Ⅲ コンセプトルーム

私たちが無印良品とともにハード面で提案したのは、「暮らしの基本」を用意すること、そして「変えられるワンルーム」をつくることです。「スタイリオ妙蓮寺Ⅲ」の一室に実際に手を加えながら、その具体的なかたちを模索しました。まず、造作デスクや収納家具といった必要最低限な機能は「暮らしの基本」として部屋にあらかじめ備え付けておきます。一方でソファやカーテンなどインテリアの印象を大きく左右するアイテムは、自分で自由に加えられる“ちょうどいい”余地として、あえて用意することなく住み手に任せることにしました。また、棚や間仕切りとして使える無印良品の「キャスター付きスチールシェルフ」を用意し、この家具を動かすだけで部屋のレイアウト変更が簡単にできるようにしています。家具を動かすことで空間の性格が変化するためオン・オフが切り替えやすく、一つの空間で気持ち良く暮らし、気持ち良く働けるのです。これが「変えられるワンルーム」です。


スタイリオ妙蓮寺Ⅲ コンセプトルーム

このコンセプトルームの詳しいご紹介はこちら >>

さらに私たちは、コンセプトルームの住み心地や家具の使い勝手を実際に探求するため、普段街づくりに関わっているSさんに居住したご意見をいただきました。今後の東急の住まいづくりにどうフィードバックしていくか、私たちの挑戦は続きます。
入居者インタビュー >>

 

地域とゆるくつながりながら暮らせる
環境づくり

私たちは、マンションや部屋をつくって終わるのではなく、住民のみなさんが入居してからのトータルな暮らしやすさを大切にしたいと考えています。だからこそ「暮らしを整える」ためのソフト面でのサポートも充実させています。

まず、無印良品に在籍するインテリアアドバイザーや整理収納アドバイザーに相談ができる体制をつくりました。インテリアや収納の相談を始め、片付けや掃除のサポートも依頼できます。新居のインテリアに悩んでいるときや収納がうまく活用できないとき、アドバイザーと定期的に話せる機会があると心強いでしょう。

さらに、私たちが当初から大切にしているのが地域や街の人々とのつながりであり、それは暮らしやすさに大きく影響します。私たちの思いに共感してくれる無印良品も、「暮らしを整えるためには街までを住空間と捉えた仕組みづくりが大切」と考えています。そしてこの思いを体現しようとスタートしたのが、毎月1回、無印良品の移動販売車が「スタイリオ妙蓮寺Ⅲ」の駐車場にやって来る「くらしサポートマーケット」です。


くらしサポートマーケット

無印良品のベーシックな生活道具や食品が並ぶほか、4月は「新生活を整える」、10月は「おうちでリラックス」といった毎月のテーマを掲げ、それに合わせた商品が並びます。月1回、突然現れるマーケットだからこそ、イベントとしての特別感やワクワク感が感じられ、街の人々もいつもと少し異なる街のにぎわいを楽しんでくれているようです。私たちはマーケットを通じて、街の人々の反応を間近で見ることができ、リアルな意見も聞けます。その声をフィードバックし、より良い住まいづくり、街づくりに生かしたいと考えています。


くらしサポートマーケット

また、マーケットでは無印良品の商品が並ぶだけでなく、駐車場やマンション敷地内の空いたスペースに地元で人気のパン屋さんやパティスリー、お花屋さんなどが月替わりで「余白出店」します。これは、妙蓮寺の不動産屋であり地域活性のため尽力している「住まいの松栄」が、地元に根付いたさまざまな店を誘致してくれているもの。当初、松栄が運営するコワーキングスペース「本屋の二階」に特典協力をお願いしたことをきっかけに、私たちの試みをさまざまなかたちでバックアップしていただいています。


人気のパン屋さんの「余白出店」も

以前は月1回、マーケットを開催する以外は空いていた駐車場ですが、松栄が間借りし、日替わりで地元のキッチンカーがやってくる「妙蓮寺Market」という空間に。「くらしサポートマーケット」は、まずは1年間限定で実験的にスタートしましたが、今ではこの場所の賑わいが妙蓮寺の日常の風景となり地域を盛り上げています。


※最新の妙蓮寺Market予定は、「住まいの松栄」にお問い合わせください。

これらの取り組みは、私たち東急だけでは成し得ず、無印良品東京有明や松栄に共感を得てもらうことでここまで膨らませることができています。この連携を地元のさまざまな企業へとさらに広げ、地域とゆるくつながりながら一緒に暮らせる住まいづくり、住民目線に立った「感じ良い沿線開発」を進めていきたいと、私たち自身が楽しみにしています。